死傷病報告書の書き方|2025年電子申請義務化に対応した記載例
現場で労働災害が発生した後、報告書を提出しようとして手が止まる——「様式は23号か24号か」「提出期限はいつまでか」「事故の型はどれを選ぶか」。担当者が実務で迷いやすい点を整理しないまま提出すると、記載漏れや誤記で監督署から差し戻しを受けることがある。2025年1月からは電子申請が義務化され、手続きの流れ自体も変わった。本記事では様式の選び方から各記載項目の実務対応まで、順を追って解説する。
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死傷病報告書とは — 安衛則第97条の義務
死傷病報告書(正式名称:労働者死傷病報告)とは、労働安全衛生規則第97条に基づき、事業者が労働者の死亡・休業の事実を所轄の労働基準監督署長に報告する法定義務文書である。
条文の骨格を確認しておきたい。安衛則第97条第1項は次のように定めている(要旨)。
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第二十三号(休業日数4日以上)又は様式第二十四号(休業日数1日以上3日以内)による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
報告義務が発生する3つのケースを整理する。
- 労働者が労働災害により死亡または休業したとき
- 就業中に負傷・窒息・急性中毒により死亡または休業したとき
- 事業場内またはその附属建設物内で負傷・窒息・急性中毒により死亡または休業したとき
注意が必要なのは、不休災害(休業なし)・通勤災害・事業者本人のみの事故は報告対象外である点だ。また「労働者」の定義は労安法上のもので、派遣労働者は派遣先事業者が報告義務を負う。
報告を怠ったり虚偽の報告をした場合は「労災かくし」として、50万円以下の罰金(労安法第120条)の対象となる。「大した怪我じゃないから」「会社の評判に関わる」という判断で隠蔽を図ることは、法的リスクとしても実務的にも避けなければならない。
(出典:厚生労働省「労働者死傷病報告の提出の仕方を教えて下さい。」)
様式23号(休業4日以上)の提出 — 提出期限「遅滞なく」
様式第23号は、労働者が死亡または休業日数4日以上の場合に使用する。2025年1月の改正後は旧来の紙様式(安衛則様式第23号)は使用できず、厚生労働省の「帳票入力支援サービス」で作成・申請する新方式に移行している(後述)。
提出期限「遅滞なく」の実務解釈
法令上の提出期限は「遅滞なく」という表現で定められている。実務上の目安として1〜2週間以内が一般的だが、死亡事故や重篤な場合は当日・翌日中の報告が求められる。
「遅滞なく」という語は法的には「合理的な理由なく遅れることなく」という意味で、事故後の混乱期を考慮した一定の猶予が含まれている。ただし放置は禁物だ。事故発生から1か月以上経過してからの提出は、監督署から事情聴取を受けるケースもある。
旧様式第23号の主な記載項目
電子申請後の新様式でも記載内容の本質は変わらない。実務担当者が把握しておくべき主な項目を示す。
| 項目 | 記載内容 |
|---|---|
| 事業場の名称・所在地 | 法人名と現場名(建設業は工事名を併記) |
| 事業の種類 | 日本標準産業分類コードで選択 |
| 労働者数 | 事故発生時点の常時使用労働者数 |
| 被災者の氏名・性別・年齢 | 被災者本人の情報 |
| 職種 | 被災者の職種(鉄筋工、溶接工など) |
| 雇用形態 | 直接雇用・派遣・請負の別 |
| 経験期間 | 当該業務の経験年数 |
| 発生日時・場所 | 具体的な日時と場所(工区・フロアなど) |
| 事故の型 | 墜落・転落、はさまれ・巻き込まれ等(後述) |
| 起因物 | 事故に関係した物・設備 |
| 傷病名と部位 | 骨折・打撲等と傷を負った部位 |
| 休業日数(見込) | 4日以上の場合は見込み日数を記載 |
| 発生状況 | 事故が起きた状況を具体的に記述 |
| 原因と対策 | 直接原因・間接原因・再発防止策 |
「発生状況」と「原因と対策」の欄は特に監督署が重視する。状況は「5W1H」で具体的に書き、対策は「教育の徹底」だけで終わらせず、設備改善・作業手順の変更など工学的対策を盛り込むことが望ましい。
様式24号(休業4日未満)の提出 — 四半期翌月末
様式第24号は、休業日数が1日以上3日以内の場合に使用する。4日以上との最大の違いは提出期限が四半期ごとの翌月末という点だ。
四半期締め提出の仕組み
| 対象期間 | 提出期限 |
|---|---|
| 1月〜3月分 | 4月末日 |
| 4月〜6月分 | 7月末日 |
| 7月〜9月分 | 10月末日 |
| 10月〜12月分 | 翌年1月末日 |
様式24号は四半期分をまとめて1枚の報告書に記載する様式だ。1枚に複数の被災者情報を記入できる。「今期は1件しか発生していないから提出しなくていい」という誤解が実務では見られるが、1件でも発生すれば報告義務は生じる。
「休業日数」の数え方
実務でよく迷う点が「休業日数」の数え方だ。労災の休業日数は事故発生日の翌日から起算する。発生当日は含まない点に注意が必要だ。また、日曜・祝日・有給休暇取得日は休業日数に含まれない(就業できる状態であれば)。
医師から「3日間の安静」と診断されても、実際の就業日ベースで数えると2日以内になるケースがある。様式23号か24号かの判断は、医師の診断書よりも「実際の休業日数(就業できない就業日の数)」で行うのが実務上の基本だ。
2025年1月電子申請義務化 — e-Govの使い方
令和7年(2025年)1月1日施行で、労働者死傷病報告の電子申請が義務化された(厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました」)。これにより旧来の紙様式(様式第23号・第24号)は使用不可となった。
義務化の対象と例外
電子申請義務化の対象は、原則としてすべての事業者だ。業種や規模による絞り込みは設けられていない。ただし次の例外がある。
- パソコン端末を保有しないなど電子申請が困難な事情がある場合 → 当面の間、書面による報告も認める経過措置がある
「当面の間」という文言は期限が不明確だが、実務上はなるべく早期に電子申請対応に切り替えることが推奨される。
電子申請の手順(帳票入力支援サービス)
電子申請には2つの方法がある。
方法①:帳票入力支援サービスで作成・印刷して郵送
- 厚生労働省ポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」にアクセス
- 「労働者死傷病報告(死亡・休業4日以上)」または「労働者死傷病報告(休業4日未満)」を選択
- 画面上で各項目を入力(プルダウンで事故の型・起因物等を選択)
- 入力内容を確認してPDF出力→印刷→所轄監督署に郵送
方法②:e-Gov経由で直接電子申請
- 帳票入力支援サービスで入力後、「e-Govへ送信」を選択
- e-Govアカウントでログイン(初回は登録が必要)
- 電子署名(マイナンバーカード等)を付けて送信
e-Govによる直接申請は、郵送コストや窓口持参の手間が省けるうえ、受付確認がメールで届くため記録としても活用できる。
電子申請は義務化されたが、記載内容の正確さは変わらない。画面入力でもプルダウン選択を誤れば誤記となり、差し戻しの原因になる。
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死傷病報告書には原因と対策の記載欄がある。日頃のヒヤリハット履歴があれば「予兆を把握していた/対策を取っていた」が証明できる。
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記載項目の書き方 — 発生状況・原因・対策欄
記載項目の中で、監督署が最も重視するのが「発生状況」「原因」「対策」の3欄だ。
発生状況欄:5W1Hで具体的に
発生状況欄は「誰が・いつ・どこで・何をしていて・どうなったか」を具体的に書く。
悪い例(曖昧):
作業中に転落した。
良い例(具体的):
令和7年3月5日午前10時30分頃、○○ビル建設現場(東京都○区)の3階スラブ端部において、型枠工Aが型枠を運搬中に開口部の養生板を踏み抜き、2階床面(約3.5m下)に墜落した。
場所は「3階スラブ端部の南東隅付近」のように、後日でも特定できるレベルで記載する。建設業では「工事名を併記のこと」という要件があるため、現場の正式名称を事前に確認しておくこと。
原因欄:管理的要因まで掘り下げる
「原因」欄は「被災者の不注意」や「ヒューマンエラー」だけで終わらせると、監督署から追加調査を求められる可能性が高い。4M分析(Man・Machine・Material・Method)で整理するのが実務上有効だ。
| 視点 | 記載例 |
|---|---|
| Man(人) | 被災者が開口部養生の位置を確認せず進んだ |
| Machine(機械・設備) | 開口部養生板の固定が不十分だった |
| Material(環境) | 開口部付近の照度が低く視認性が悪かった |
| Method(作業手順) | 資材運搬ルートの事前確認手順がなかった |
4つの視点から原因を書くことで、「表面上の原因」と「管理上の問題」が浮かび上がり、後の再発防止策と整合性が取れる。
初動対応から報告書作成の連続した流れについては、労災発生時の初動対応で詳しく解説している。
対策欄:教育だけで終わらせない
再発防止策は「工学的対策 → 管理的対策 → 教育」の順番で優先度が高い。
記載例:
①開口部養生板を固定ピンで確実に固定する施工標準を改定(工学的対策)。②資材運搬時の作業ルート確認を事前KYの必須項目に追加(管理的対策)。③全作業員へ本事故の発生状況と再発防止策を水平展開(教育)。
「教育の徹底」だけの対策は、再発時に「なぜ再発したか」の説明がつかなくなる。物理的な対策と手順的な対策をセットで記載することが、監督署への説明責任を果たす上でも重要だ。
事故型分類の選び方 — 厚労省分類コード
事故の型は、傷病を受けるもととなった起因物が関係した現象のことをいい、厚生労働省の分類では21区分が定められている。電子申請の帳票入力支援サービスではプルダウンで選択する形式だが、選択を誤ると統計上の誤記となるため正確な理解が必要だ。
21区分の一覧
| コード | 事故の型 | 代表的なケース |
|---|---|---|
| 01 | 墜落・転落 | 足場・はしごから落ちる、高所から転落 |
| 02 | 転倒 | 床面・通路上での転倒(高さなし) |
| 03 | 激突 | 走行中の車・クレーンフックに当たる |
| 04 | 飛来・落下 | 上方から物が落ちてくる |
| 05 | 崩壊・倒壊 | 土砂崩れ、構造物の倒壊 |
| 06 | 激突され | 運搬物・移動物に体をぶつけられる |
| 07 | はさまれ・巻き込まれ | プレス・ローラー等に巻き込まれる |
| 08 | 切れ・こすれ | 刃物・鋭利な端部で切傷 |
| 09 | 踏み抜き | 釘・突起物を踏み抜く |
| 10 | おぼれ | 水・液体に入り溺水 |
| 11 | 高温・低温物との接触 | 溶接・蒸気・凍結面に触れる |
| 12 | 有害物等との接触 | 薬液・有機溶剤の被液・吸引 |
| 13 | 感電 | 電線・機器への接触による感電 |
| 14 | 爆発 | 可燃性ガス・粉じん爆発 |
| 15 | 破裂 | 容器・配管の破裂 |
| 16 | 火災 | 作業中の火災による火傷・煙 |
| 17 | 交通事故(道路) | 公道上での交通事故 |
| 18 | 交通事故(その他) | 構内・施設内での車両事故 |
| 19 | 動作の反動・無理な動作 | 腰痛・筋肉損傷(重量物持ち上げ等) |
| 20 | その他 | 上記に分類できない事故 |
| 21 | 分類不能 | 原因が特定できない場合 |
(出典:厚生労働省「事故の型分類コード表」各労働局掲載版)
混同しやすいペアの見分け方
「墜落・転落(01)」vs「転倒(02)」
「高さの変化があるか」が判断基準だ。足場から床面へ落ちる・階段で落ちる → 墜落・転落(01)。同一平面上でつまずく・スリップする → 転倒(02)。
「激突(03)」vs「激突され(06)」
主体が「自分が物にぶつかる」か「物が自分にぶつかってくる」かで分かれる。フォークリフトに自分が気づかず歩いていてぶつかる → 激突(03)。作業中に振り子状に動くクレーンフックが体に当たる → 激突され(06)。
「はさまれ・巻き込まれ(07)」の適用範囲
2つの物体に挟まれる(プレスの金型に手が挟まれる)、または回転体に巻き込まれる(ベルトコンベアに手が引き込まれる)ケースが該当する。ドアや窓に指を挟む程度のケースも含まれる。
起因物の選び方
起因物は「直接的に傷害を与えた物・設備」を選ぶ。上記の事故の型と対になる項目で、大分類・中分類・小分類の階層構造で選択する。建設業でよく使われるのは次の通り。
- 足場・作業構台
- 建設機械等(クレーン・掘削用機械等)
- 動力運搬機
- 手工具類(非動力)
- 木材・金属等の材料
起因物と事故の型の組み合わせが統計上不整合(例:起因物「化学物質」で事故の型「墜落・転落」)だと差し戻しになりやすい。入力前に組み合わせの整合性を確認することを習慣化したい。
労災隠しを疑われない書き方 — 注意点
死傷病報告書の提出を巡って、事業者が「労災隠し」と認定されるケースは想定以上に多い。報告しないことだけでなく、記載内容の不正確さも問題になりうる。
「労災かくし」と認定されるリスクがある行為
- 報告書を提出しない — 最も典型的な違反。確認が入るのは主に被災者が労災申請をした際や、同業者・元請への情報漏れがあった際だ
- 休業日数を少なく記載する — 実際の休業が4日以上あるのに「3日以内」として様式24号で提出するケース
- 発生状況を事実と異なる内容で記載する — 「業務中」なのに「私的行為中」として記載する
- 報告を大幅に遅延させる — 事故から数か月経過後に提出するケース
労働基準監督署は定期監督や申告監督の際に、過去の死傷病報告と労災給付実績を照合する。不一致が発見されると即座に調査対象となる。
記載漏れ・誤記を防ぐチェックポイント
提出前に以下を確認する習慣を持ちたい。
□ 事業の種類(産業分類コード)は正確か
□ 被災者の雇用形態(派遣の場合は派遣元・派遣先を区別)は正しいか
□ 発生場所が特定できる記述になっているか
□ 事故の型と起因物の組み合わせに整合性があるか
□ 傷病名と傷病部位が一致しているか(「骨折」なら「右前腕部」など)
□ 休業日数(見込)は医師の診断書と整合しているか
□ 発生状況が5W1Hで具体的に書かれているか
□ 原因欄に管理的要因が含まれているか
□ 対策欄に工学的対策・管理的対策が含まれているか
□ 押印・代表者署名は不要になったが、申請者情報は正確か(電子申請の場合)
在留外国人労働者が被災した場合
建設・製造現場で在留外国人が被災した場合も、報告書の記載内容や報告の義務は日本人と変わらない。発生状況の記述は日本語で行い、通訳を介して事実確認することが必要だ。被災者の氏名はパスポートの表記に従ったローマ字(またはカタカナ)表記で記載する。
よくある質問
Q. 死亡事故の場合、様式23号の提出期限はいつか?
法令上は「遅滞なく」だが、死亡事故の場合は事故当日または翌日中に所轄労働基準監督署に電話で第一報を入れるのが実務上の慣行だ。書面(電子申請)での正式な報告は、現場保存・調査が完了した後に行う。速報と正式報告の2段階で対応することが、監督署との関係上も適切だ。
Q. 2025年1月以降、紙の様式は一切使えないのか?
原則として旧来の様式第23号・様式第24号(紙)は使用できない。ただしパソコン端末を保有しないなど電子申請が困難な場合は、当面の間、書面による報告も認める経過措置がある(出典:厚生労働省「労働者死傷病報告の報告事項が改正され、電子申請が義務化されました」)。経過措置が適用されるかどうかは、所轄の労働基準監督署に確認することが確実だ。
Q. 「4日未満」か「4日以上」か判断が難しい場合はどうするか?
発生直後は休業日数が確定していないケースがある。その場合は「見込み」で判断してよい。当初4日未満と見込んでいたが実際に4日以上になった場合は、様式23号で改めて提出する必要がある。「最初に24号で出したから OK」とはならない点に注意が必要だ。
Q. 下請け作業員が被災した場合、報告義務は元請か下請か?
労安法上、被災した労働者を直接雇用している事業者(下請け)が報告義務を負う。ただし元請への情報共有は現場管理上必要であり、元請が代行して報告書を作成・提出するケースも実務上は多い。派遣労働者の場合は、就業実態がある派遣先事業者が報告義務を負う点が、請負とは異なる。
まとめ
死傷病報告書の実務を整理すると、次の3点に集約される。
① 様式の選択と提出期限を間違えない。休業4日以上(死亡含む)は様式第23号相当のフォームを「遅滞なく」(実務上1〜2週間以内)提出。休業4日未満は様式第24号相当のフォームで四半期翌月末までに提出。
② 2025年1月以降は電子申請が原則義務。厚生労働省の帳票入力支援サービスからe-Gov経由で申請する。旧来の紙様式は使用不可。PCを持たない事業者は当面の例外措置で書面も可能だが、早期移行が望ましい。
③ 発生状況・原因・対策の記載が最重要。5W1Hで具体的に書き、原因は4M視点で、対策は工学的対策を含めて記載する。曖昧な記載は差し戻しの原因になり、「教育の徹底」だけの対策は再発時の説明責任を果たせない。
報告書の精度を上げるには、日常のヒヤリハット記録が土台になる。事故が起きてから「予兆がなかったか」を振り返るより、日頃から記録されたヒヤリハット履歴が「対策を取っていた証拠」として機能する。
現場改善に役立つ関連アプリ
| アプリ名 | 概要 | こんな課題に |
|---|---|---|
| 安全ポスト+ | QRコードでヒヤリハットを匿名報告、AIが4M分類 | 報告書の根拠となる予兆データを蓄積 |
| AnzenAI | KY活動・安全書類作成 | 死傷病報告書作成を効率化 |
| WhyTrace Plus | 5Why分析 | 報告書「原因」欄の質を上げたい |