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労災保険給付の種類|療養・休業・障害・遺族の給付内容と申請手続き

カテゴリ: 事故対応・報告 #労災保険#給付#療養給付#休業給付#障害給付#遺族給付

労災事故が発生した後、現場担当者や人事・総務が最初に直面するのが「どの給付を、どこに、どう申請するのか」という壁だ。労災保険の給付体系は多岐にわたり、業務災害と通勤災害で様式も変わる。本記事では、申請担当者が手元に置ける実務リファレンスとして、7種類の給付と特別支給金の内容・申請手順を体系的に整理する。

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労災保険給付の全体像

労災保険給付とは、労働者が業務上または通勤途中に被った傷病・障害・死亡に対して、国(労働基準監督署)が支払う給付金の総称である。事業主が全額保険料を負担し、受給に際して労働者の自己負担は原則ゼロだ。

給付体系は大きく7種類に分かれる。加えて、各給付に上乗せされる「特別支給金」がある。

給付種類支給事由業務災害の様式番号通勤災害の様式番号
療養(補償)給付療養が必要なとき5号(指定病院)/ 7号(非指定)16号の3 / 16号の5
休業(補償)給付休業4日目以降8号16号の6
障害(補償)給付症状固定後に障害が残ったとき10号(年金)/ 10号(一時金)16号の7
遺族(補償)給付死亡したとき12号(年金)/ 15号(一時金)16号の8
葬祭料(葬祭給付)葬祭を行うとき16号16号の10
傷病(補償)年金療養1年6か月後も治癒せず傷病等級1〜3級職権で移行(請求書なし)同左
介護(補償)給付障害・傷病年金受給者が介護を受けるとき16号の2の2同左

出典:厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」・各都道府県労働局公表資料(2026年5月時点)

特別支給金は、上記の保険給付とは別に労災保険特別支給金規則に基づいて支給される。受給にあたり特別の請求は不要で、保険給付の請求書を提出することで同時に申請される仕組みだ。保険給付と合算すると実質的な給付率が変わるため、後述する各給付の説明では必ず特別支給金と併記する。

療養(補償)給付 — 病院窓口の手続き

療養(補償)給付とは、業務上または通勤による傷病について、必要な医療を無償で受けられる給付である。「現物給付」としての療養の給付と「現金給付」としての療養の費用の支給の2種類がある。

療養の給付(現物給付)

労災指定病院または指定薬局で治療を受ける場合、窓口で保険料を支払う必要がない。受診時に「業務災害」なら様式第5号、「通勤災害」なら様式第16号の3(療養給付たる療養の給付請求書)を病院窓口に提出するだけで手続きが完了する。

健康保険との根本的な違いは、療養が続く限り給付に期間制限がない点だ。症状固定まで保険給付で医療費が全額賄われる。

療養の費用の支給(現金給付)

近隣に労災指定病院がなく非指定病院で受診した場合は、いったん医療費を立替払いし、後から費用の支給を請求する。業務災害は様式第7号(第1〜6号は欠番扱い)、通勤災害は様式第16号の5を使う。

実務上の注意点:

休業(補償)給付 — 給付基礎日額60%+特別支給金20%

休業(補償)給付とは、業務上または通勤による傷病の療養のために仕事を休み、賃金が受けられない日に支給される給付である。休業4日目以降が対象で、最初の3日間(待期期間)は事業主が労働基準法上の休業補償(平均賃金の60%)を支払う義務を負う。

給付額の計算

項目支給率根拠
休業(補償)給付給付基礎日額 × 60%労働者災害補償保険法第14条
休業特別支給金給付基礎日額 × 20%労災保険特別支給金規則第3条
合計給付基礎日額 × 80%

出典:厚生労働省「3-5 休業(補償)等給付の計算方法を教えてください。」(2026年5月時点)

給付基礎日額とは、被災前3か月間に支払われた賃金総額を同期間の総日数で割った額だ(労基法上の平均賃金に相当)。

計算例: 月給20万円・賃金締切日末日・7月に被災した場合

請求書は様式第8号(業務災害)または様式第16号の6(通勤災害)を、月単位でまとめて労働基準監督署へ提出するのが一般的だ。


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障害(補償)給付 — 1〜14級の等級別給付

障害(補償)給付とは、傷病が「症状固定(治癒)」した後も身体に一定の障害が残った場合に支給される給付である。ここでいう「治癒」とは完全な回復ではなく、「これ以上治療を続けても医学的に症状の改善が見込めない状態」を指す点に注意が必要だ。

1〜7級:障害(補償)年金

障害等級第1〜7級に認定されると、終身にわたって毎年年金が支給される。年金は偶数月に前2か月分ずつ、年6回支払われる。

等級年金(給付基礎日額×日数分)障害特別支給金(一時金)
第1級313日分342万円
第2級277日分320万円
第3級245日分300万円
第4級213日分264万円
第5級184日分225万円
第6級156日分192万円
第7級131日分159万円

出典:労災保険情報センター「労災保険給付等一覧」(2026年5月時点)

8〜14級:障害(補償)一時金

障害等級第8〜14級は、一回限りの一時金として支給される。

等級一時金(給付基礎日額×日数分)障害特別支給金(一時金)
第8級503日分65万円
第9級391日分50万円
第10級302日分39万円
第11級223日分29万円
第12級156日分20万円
第13級101日分14万円
第14級56日分8万円

申請は様式第10号(業務災害)または様式第16号の7(通勤災害)を、症状固定後に管轄の労働基準監督署へ提出する。等級認定は労基署の調査に基づき行われる。

遺族(補償)給付 — 年金・一時金

遺族(補償)給付とは、業務上または通勤途上で労働者が死亡した場合に、生計を同一にしていた遺族に支給される給付である。遺族(補償)年金と遺族(補償)一時金の2種類がある。

遺族(補償)年金の受給資格

受給できるのは、被災労働者の死亡当時にその収入によって生計を維持していた配偶者・子・父母・祖父母・兄弟姉妹だ(優先順位順)。妻については要件なし。それ以外の遺族には年齢要件がある(子・兄弟姉妹は18歳未満、父母・祖父母は55歳以上 等)。

年金の額は遺族数に応じて給付基礎日額の153日〜245日分が支給される(出典:厚生労働省「遺族(補償)等給付」資料)。

遺族特別支給金として定額300万円が一時金で上乗せされる(最先順位の受給権者に支給)。

遺族(補償)一時金

遺族年金の受給資格者がいない場合、または受給権者全員が受給資格を失った場合(総受給額が給付基礎日額1,000日分未満のとき)に支給される。額は給付基礎日額の1,000日分だ。

時効: 遺族(補償)年金は、被災労働者死亡日の翌日から5年で時効が完成する。手続きは速やかに進めることが重要だ。

申請書類は様式第12号(年金・業務災害)または様式第16号の8(年金・通勤災害)を、死亡診断書・戸籍謄本・生計維持関係の証明書類とともに労基署に提出する。

傷病(補償)年金・介護(補償)給付

傷病(補償)年金

傷病(補償)年金とは、業務上の傷病の療養開始後1年6か月を経過しても治癒せず、かつ傷病等級第1〜3級に該当する状態が続く場合に、休業(補償)給付に代わって支給される年金給付である。

大きな特徴は「請求不要」という点だ。労基署が職権で移行を決定する。受給者側が申請書を出す必要はなく、労基署から書類の送付を求められる形になる。

傷病等級年金(給付基礎日額×日数分)傷病特別支給金
第1級313日分114万円
第2級277日分107万円
第3級245日分100万円

なお、傷病(補償)年金に移行した後も療養の給付は継続して受けられる。

介護(補償)給付

介護(補償)給付とは、障害(補償)年金または傷病(補償)年金の第1・2級を受給している者が、実際に常時介護または随時介護を受けている場合に支給される給付である。

2025年度の支給上限額(厚生労働省公表)は次のとおりだ。

介護の区分支給上限額(月額)
常時介護(親族等以外の介護)104,590円
随時介護(親族等以外の介護)52,300円

親族等が介護する場合でも、介護に費用を支出していれば支給される(ただし上限あり)。様式第16号の2の2を管轄労基署に毎月提出する。

第三者行為災害と通勤災害

第三者行為災害とは

第三者行為災害とは、「第三者の行為によって引き起こされた労災であり、その第三者が被災労働者または遺族に対して損害賠償義務を負うもの」である(出典:神奈川労働局「第三者行為災害」)。典型例は通勤中の交通事故だ。

このケースでは、労災保険の給付と第三者からの損害賠償の両方を受け取ることはできない。先に労災保険で給付を受けた場合、国が第三者への求償権を取得する(控除調整)。逆に損害賠償を先に受けた場合、その額の限度で労災給付が停止・調整される。

手続き上の必須書類: 労災給付の請求書に加え、「第三者行為災害届」(様式なし・任意書式)を管轄労基署に提出する。自動車事故なら「自動車損害賠償保険等の受領状況届」も必要になる。


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通勤災害の特徴

通勤災害とは、労働者が通勤途中に被った傷病・障害・死亡のことをいう(労災保険法第7条)。「通勤」の定義は、合理的な経路・方法による往復であり、寄り道(逸脱・中断)があると通勤経路を外れた時点から通勤災害扱いが解除される。ただし、日用品の購入など日常生活上必要な行為として厚労省令で認められた寄り道なら例外として認められる。

給付内容は業務災害とほぼ同じだが、いくつかの相違点がある。

申請様式は全て「16号の〇」系の様式を使う(業務災害の5号・8号・10号等に対応した通勤災害版)。

よくある質問

Q. 休業補償給付はいつから受け取れるのか?

休業4日目以降から支給される。最初の3日間は「待期期間」として業務災害の場合は事業主が労基法上の休業補償(平均賃金の60%)を支払う義務を負う。通勤災害の待期3日間は労働者の自己負担となる点が異なる。

Q. 労災認定されるまでの間の医療費はどうなるのか?

労災認定の前であっても、労災申請中であることを病院窓口に伝えて様式を提出すれば、原則として認定を待たずに療養の給付を受けられる。ただし、最終的に業務外と認定された場合は自己負担が生じる。健康保険での受診は後から切り替え可能だが手続きが煩雑になるため、最初から労災扱いで受診するほうが実務上は望ましい。

Q. 障害(補償)給付と障害年金(国民年金・厚生年金)は両方もらえるのか?

原則として両方受給できる。ただし、同一事由による障害厚生年金と障害(補償)年金が重複する場合、労災の年金額が一定率で減額調整される(労災側が減額され、国民年金・厚生年金は全額支給という形)。調整率は障害等級によって異なり、障害厚生年金との併給では労災年金に0.73〜0.83の調整係数が乗じられる。

Q. 第三者行為災害で加害者から示談を求められた場合、どうすればよいか?

示談に応じる前に必ず管轄の労働基準監督署に相談することが重要だ。労災の受給前に第三者との示談が成立すると、示談金額の限度で労災給付が制限される可能性がある。示談は労災給付を受け取った後に行うのが原則で、その際も「将来の請求権を放棄しない」旨を示談書に明記するよう弁護士に確認してもらうべきだ。

まとめ

労災保険の給付体系を改めて整理すると、次の3点が実務上の重要ポイントだ。

  1. 業務災害と通勤災害で様式が異なる — 業務災害は5号・8号・10号系、通勤災害は16号系。様式の選択ミスが多いため、受診・申請の最初に確認する

  2. 特別支給金は申請と同時に自動付与される — 給付基礎日額の20%上乗せ(休業給付の場合)や定額一時金(遺族・障害)は、保険給付請求書の提出で同時に申請完了する

  3. 時効は短い — 療養・休業は2年、障害・遺族は5年。事故後の手続きは速やかに進めることが損失防止の鉄則だ

事故が起きてから給付申請を急ぐのではなく、日頃からヒヤリハットを記録し、再発防止策を講じる体制を作ることが根本的な対応だ。給付申請の根拠記録にもなるインシデント報告の仕組みを現場に組み込んでおきたい。

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